宝塚歌劇団を退団したときに、私は26歳でした。
もともと芸能関係のお仕事に就きたかったのもありますが、退団時は少し舞台に疲れていましたのでいったんお休みすることにして30歳になるまでの夢である海外留学をすることにしました。
今日はそのきっかけになった海外旅行についてお話をしたいと思います。
本場での経験に勝るものはない
自由の国アメリカ。
そしてアメリカと言えばニューヨーク!
宝塚時代は公演やお稽古がないOFFの期間を利用して海外旅行に行く人が多く、次に取り組むお芝居が中世のものだとヨーロッパへ、休暇を過ごすために南国へ行ったりします。
あるお休み期間に私はミュージカルを見るため、ニューヨークとラスベガスの旅を英語に精通した方と母と一緒に出掛けることになりました。
憧れのニューヨーク!
ブロードウェィダンスセンターで実際にダンスのお稽古を受けてみよう!
そう思った私は、さっそくダンスセンターに行きレッスンの予約。
周りはみんなニューヨーカー。
ミュージカルの本場ニューヨークでダンスのお稽古!
さくらちゃん?
日本語で私の名前を呼ぶ人が・・・
なんと!同じ組の上級生でした!!
同期でも行先を告げない時もありますので、もちろん上級生のご予定など知ることもありません。
偶然にもダンスセンターでの遭遇だったのです!!
なんだが劇団のお稽古場に戻ったみたいで変な感じがしましたが、日ごろからかわいがっていただいている素敵な上級生だったのでニューヨークのブロードウェイでお会いできるなんてとても嬉しくて、テンションが上がりました!
目指すところが同じだと、こういった偶然もあるのですね。
私はそこで数回レッスンを受け、ミュージカルをたくさん見てニューヨークの街を満喫しました。
タイムズスクエアの賑わい、ダンサーの素敵なポージングの看板の前で同じようにポーズして写真を撮り、街が素敵すぎてニューヨークを大好きになりました。
もちろんミュージカルは英語ですので、当時全く英語が話せなかった私はウトウト寝てしまったものもありますが、レ・ミゼラブルを見たときはその表現力のすごさが脳裏に焼き付き、あまりの感動にしばらく放心状態でした。
ラスベガスではシルクドソレイユの「O オー」を観劇。
水の中にグランドピアノや舞台が沈んでいったかと思えば天井から炎の中での空中ブランコ。
見とれているうちに今度は火の舞台が登場したりとその世界観に圧倒し、世界のアメリカを感じました。
私が今までミュージカル女優として宝塚歌劇団で演じていたものがまだまだ足りないことに気付きました。
本物とはこういうものなのだ!
世界ってこんなにすごいんだ!
感激を通り越してショックでした。
人間技とは思えない完璧な技術。
人間がするものに完璧などないと思っていましたが、ここは違いました。まさに神業です。
本当にいい旅行をさせてもらいました。
このころ私は研究科6年目。
今後の自分の進路も考え、どうしたいのか、何がしたいのか?いろいろと考えているところでしたのでこの経験はその後の私に多大なる影響を与えました。
次の公演で炎の中で逃げ惑う民衆の役が回ってきました。
宝塚のお芝居は炎の中で逃げ惑っていても、止まって歌うシーンがあるのです。
歌っている場合ではなくて逃げないと!というときこそ歌います。笑
私はレ・ミゼラブルの一場面を思い出し、情景を想像しながら演じました。
迫力が伝わったのか、とても褒められたことを覚えています。
セリフがある役ではありませんでしたが、私にとってはとても大切でお気に入りのシーンでした。
そしてこの迫真の演技をいつも私のことを応援してくれているファンの方に見てもらいたい!という思いでいっぱいでした。
あの時、本物を見てなかったらこの時の表現はできていなかったかもしれません。
本物を知る
私は後輩や若い子たちに「本物を見る大切さ」を伝えることがあります。
そして自分自身も今でも常に本物を見たいという意識を持っています。
私の友人にしょっちゅう舞台鑑賞・美術鑑賞をしている人がいます。
私は彼女のブログやインスタグラムを見て常に勉強させていただいています。
芸術から得られるものは、センスやアイディアそして創造力です。
世界の芸術家たちが作り上げたものから吸収し教養を身につける、そんな幅の広い人間になることは非常に重要です。
私ももっとフットワーク軽く、いろんなところに出かけたい!最近あらためてそう思うようになってきました。
初めて知るものというのはすべてが新しいもので真っ白な状態です。
最初が本物でないとそれ以上のものは身に付きません。
ですから日ごろからいいものに触れるというのが大切です。
そしていい師につく。
これも重要です。
私の海外経験はまだまだ続きます。
気くばりとは少しかけ離れますがご容赦を。
おまけ
私が小さいころから習っていたピアノ教室はバッハインベンションが弾けないと発表会に出られませんでした。
お月謝も通常の3倍ぐらいはしました。
母の友人が、私にどうしても紹介したい先生がいるということで、しぶしぶ母は私を連れてその先生のお稽古場へ行きました。
何も事情を知らない私はその当時小学校に入るか入らないかのころ。
ピアノの音の違いなど判るはずもなかったのですが、ピアノを習ったことがない母が、その先生のピアノの音に感動しこの教室に通わせてもらえることになりました。
母は芸術関係のお稽古事には全く携わったことがないので先生の良し悪しなどの判断にたけているわけではありませんでしたが、子供には本物を!と思ってくれたのでしょう。
このときここでピアノを習っていなければ続けていなかったと思います。
質の高い教育を小さいころにさせてもらえたことは親と環境に感謝です。
センスというものは必ず身につくものです。
センスがあまりよくないと自覚のある人は今からでもセンスを磨く努力をすれば必ずセンスが良くなります。
いいものを見て、本物に触れてそれをアウトプットすること。
そうすれば必ずいいものが作れるのです。
本日もお読みいただきありがとうございました。