上から目線という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
なんだかこの方感じが悪い・・・と思いますよね。
宝塚では目上の方に関して上から見下ろすのはNGの行動です。
上級生に話しかけるときは、必ず様子を見計らい
「失礼します」と言ってからお声がけします。
上級生が同期生や周辺の方とお話していたりするときに邪魔しないようにタイミングを見計らうことは鉄則です。
考え事をされているのか、リラックスして一点を見つめておられるのか注意深く観察。
そしてGO!
お稽古場のいすに座られているところを狙いますので、当然このままだと見下した状態になります。必ず立てひざをついて目線を下げてお話をさせていただくのです。
このように目上の方とお話をする際には、必ず目線を下げます。
これは実生活の仕事場でも活かせますので、ぜひやってみてください。
風下を歩く
宝塚音楽学校生は予科生・本科生と呼ばれ劇団員からするとひよっこです。
宝塚南口駅から宝塚大劇場までには宝塚大橋という大きな橋があります。
上級生は風上を歩きますが、下級生と音楽学校生は必ず風下の道を通らなければならないのです。これはいかなる場合でも。
新人が風上を通るなどもってのほか、ましてやそこは宝塚大劇場に向かうお客様が通られる道でもありますので、私たちは控えます。
宝塚駅からくると「宝塚花のみち」という少し高台になった小道が大劇場のほうまで続いています。
春は桜がとってもきれいでさくらの道です。
私は宝塚に合格したら、音楽学校のグレーの制服を着て必ずこの花の道を通るんだ!
そう決めていましたので、合格するまでその道を通ることなく下の普通の道から「花の道」を眺めて待ち望んでいました。
ところが入学してから、花のみちは通ってはいけないルールがあることを教えていただきました。
お客様を見下ろすことになるからです。
在団中、残念ながら私は花のみちを歩くことができませんでした。
宝塚歌劇団を応援してくださるお客様をタカラジェンヌが見下ろすなどとんでもないこと。
納得の理由でした。
退団後、はじめて花のみちを同期と渡りました。
タイムスリップして音楽学校に合格したときのことを思い出し懐かしんだ記憶があります。
目上の人を立てる立ち回りも大事
私は社会人になってあらためて秘書検定の本を熟読しました。
タクシーの乗り方で上席が運転手席の後ろに座り、その次が手前です。
上司がレディファーストで私を運転手席の後ろに通してくださいました。
急いでいたので少し戸惑いましたが乗りました。
それを見ていた女性経営者の方が後日、
上司が通してくれるのは、あなたの立ち位置が悪いからよ。
先に乗っていいよと言わざるを得ない位置にあなたが立っているから。
とご注意をいただきました。
本人はそのつもりはなくても見ている人は見ていますから、そんな部下の教育もなっていない上司が笑われてしまうわけです。
元タカラジェンヌなのにお恥ずかしい、そんな失敗もあります。
上席を立てるのも部下のお仕事。
宝塚の上級生は自分たちが偉いとは誰一人思っていません。
自分たちも今下級生がしていることをしてきたのですから、躾として伝統を伝えているだけなのです。
その時は、一歩動けばご注意をいただくそんな日々でしたので、とにかく必死でいきていた毎日でした。
舞台の面でも芸事の面でも、上級生は経験豊富な大先輩。
学ばせていただく姿勢はみんな変わりませんでした。
厳しい宝塚の規則も、現代の今ではずいぶん変わっていると思います。
それはそれで時代に合わせたやり方ですのでこんな時代もあったのだなと思っていただければ幸いです。
本日は控える姿勢についてお伝えいたしました。
場をわきまえると同じような内容ではありますが、お読みいただきありがとうございます。
ではまた明日のブログで。
おまけ
お稽古中、スターさんにファンの方からの差し入れや、ファンレターなどが届きます。
研一(研究科一年目)は宝塚歌劇団の事務所にある組ごとのお手紙ボックスを整理し、輪ゴムでとめてお稽古場に持っていきます。
そんなとき、たまに自分あてにファンの方からのお手紙が届くととっても嬉しいのです♪
感謝♪
差し入れのなかでも生ものや、すぐにお渡ししたほうがいい冷蔵・冷凍のものはすぐさまお持ちします。
お手紙など緊急を要しないものは、お稽古の合間である休憩時間にタイミングを見計らいお席までお持ちします。
ここでもポイントがあります。
休憩になったからといって飛んでいくと、お手洗いのためにお席を立たれたのに差し入れをお渡ししたことで、いったん席に戻らなければならなくなった・・・ということにもなりかねません。
ここも観察です。
自分もタカラジェンヌではありますが、やはり憧れのスターさんがこんなに近くにいるのです。
毎日誰がスターさんに差し入れを持っていくか、話し合ったり譲ったり。
「ありがとう」
差し入れやお手紙を手渡した後に言われるこの一言は、顔には出さないものの心躍らんばかりの夢心地でいただき
今日のHappy!!
として記憶のフォルダにいれていきます♪
つらく、厳しいことのほうが多いように見えるかもしれませんが、
それらをすべてかき消してしまう舞台とやりがいがいつもそこにありました。
かけがえのない青春ですね。